患者さんはステロイドに様々な不安を抱いています。なかにはとんでもない誤解もあります。今回はよくありがちなステロイドの誤解と正しいステロイドの塗り方をご紹介します。処方せんでは軟膏1本だけですが、指導すべきことはたくさんあります。ぜひ今回の指導せんを使って正しいステロイドの使い方を指導してください。
1.ステロイドの間違い
- 皮膚が黒くなる
- 骨がもろくなる
- 顔がまるくなる
- 皮膚が象のようになる
- ステロイド依存になる
むしろステロイドは皮膚を白くします。黒くなる原因は、肌を掻いたり、弱くなった皮膚への紫外線の影響です。皮膚に炎症がおこっている状態が続くと皮膚は黒くなっていきます。炎症が起こったら、なるべく早期にステロイドを使いましょう。これが皮膚が黒くなるのを防ぐ一番の方法です。
ステロイドの飲み薬と混同しています。塗り薬でこういった副作用が起こることはほとんどありません。
これもステロイドの飲み薬によって起こり得る副作用です。
アトピーの方は年数の経過とともに塗り方が乱雑になりがちです。塗り方が悪くなると症状も悪くなります。悪くなったのをステロイドのせいにして急に使用をやめると皮膚がごわつき、象のようになることがあります。ステロイドはこういった症状を治す効果があります。治療をむやみにやめることは危険です。
医師の指示のもと、適切に使用していたら心配する必要はありません。ただし、ステロイドに頼りきるのは良くないです。生活習慣の改善や日ごろの習慣がステロイドに頼らない皮膚をつくる基本となっていきます。
3.皮膚で起こっている炎症は火事!
ステロイドは強いものほど炎症を鎮火させる能力が高い。ステロイドを怖がって適切な量が塗れていないと皮膚で起こってる火事はどんどん広がっていき、なかなか鎮火しません。なるべく短期間で炎症を鎮火させて、再び発火しないようにケアしていくことが最も重要です。弱いステロイドや非ステロイドをだらだらと使用していては皮膚へのダメージが増すばかりですね。
3-1.ステロイドは強めのものから、量もたっぷりと使う
これはステロイドを使う上での基本です。ステロイドが怖いという誤解が治療を長引かせています。ステロイドについてどう思っているか聴いて、誤解があれば解いてあげましょう。
4.ステロイドの塗り方の基本
- 手を洗う
- 入浴後の塗布が効果的
- 強くすりこまない!やさしく広げる
- 患部がテカるくらい塗る
- 保湿剤→ステロイド
- 症状改善でやめてOK
汚い手でステロイドを塗っても細菌汚染の原因となるだけで、まったく意味がありません。手を清潔にしてから塗りましょう。
患部を清潔にして、適度な水分を与えてから塗るほうが効果が高いです。水分を拭き取るときもタオルを押し当てて刺激を与えないように拭くようにしましょう。
皮膚が炎症しているところへ擦り込むように塗ると、さらに皮膚があれる原因になってしまいます。なるべく刺激を与えないように、やさしく塗り拡げるようにしましょう。塗る範囲が広い場合はクリームを1か所だけでなく数か所においてから塗るほうが塗りやすい。
1FTUで手のひら2枚分くらいの範囲に塗る量がベストです。ただし、5gや10gチューブでは口径が小さいため1FTUでは十分量が取れません。1.5FTUくらいで手のひら2枚分と考えたほうがいいでしょう。ポイントは 「ティッシュが付く、テカる程度」と薬剤師は表現しています。少しべたつくくらい塗ったほうが良く効くということですね。
保湿剤とステロイドを一緒に使うときの順番は基本的に医師の指示によります。指示がない場合は、ステロイドを炎症があるところだけに塗るのがベストです。ステロイドから先に塗ってしまうと後から塗る保湿剤で正常な皮膚にまでステロイドを伸ばしてしまう。保湿剤を全体的に塗ってから、ステロイドを炎症部のみに重ねて塗るようにしましょう。
基本的には症状が治まればやめてもらって大丈夫です。ただし再燃を繰り返す場合やアトピーの場合では医師の指示のもと中止をするようにしてください。
5.記事の指導せん
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6.まとめ
今回はステロイドでありがちな誤解と正しい塗り方についてご紹介しました。今回の指導せんを使って簡潔にステロイドの正しい塗り方を指導してみてください。ステロイドの塗り方は時間の経過とともに疎かになりがちです。初めて使う患者さんだけでなく、継続的に使う患者さんにも定期的に指導するといいでしょう。