認知症の患者にイラッとしても言葉にだしてはいけません。肯定的に受け答えすることが上手な接し方のポイントです。今回は、認知症の患者を理解して、どのように接したらいいかご紹介します。
1.老化と認知症の違い
加齢とともに物忘れの頻度は増えてきます。老化による物忘れと認知症の物忘れは何が違うのか理解しておく必要があります。
1-1.老化の場合
加齢に伴う物忘れでは「やること」「やったこと」は覚えています。ものごとに柔軟に対応する能力が低下し、思い違いで混乱することもありますが、「自分が何をしているのか」忘れることはありません。
加齢による物忘れの例
- 火がつきっぱなしに気づいて消した
- 鍵をどこにしまったか忘れる
- 予約日を忘れる
1-2.認知症の場合
認知症に伴う”もの忘れ”では「やること」「やったこと」自体を忘れます。これを中核症状といいます。さらに認知症が進行すると、行動心理症状(BPSD)へ発展していきます。BPSDまで症状が悪化すると介護するのが大変になるので早期に治療を開始することが大切です。
中核症状の例
- 誰かがコンロの火をつけた
- 鍵をなくした
- 予約なんてしていない
BPSDの例
- 不眠・睡眠障害
- もの盗られ妄想
- 夜間に異常行動
2.病気を理解する
記憶障害が進むと、こちらが何度説明しても忘れてしまい、同じ質問を繰り返すようになります。周りの家族や介護者はいらつきから自分の感情を言葉にだすこともありますが、認知症の患者は、なぜ相手が怒っているのか理解していません。不快な気持ちから自分にいいがかりをつける嫌な人だと思っています。
2-1.接するために大切なこと
同じことを繰り返し質問されても穏やかな気持ちでその度に初めて話すつもりで話をすることが大切です。ご家族や介護者の適切な対応で症状はよくなります。
2-2.記憶障害の特徴と対応方法
⦿ 最近の行動を忘れる。
食事したことを忘れ、何度も不満を言います。これは食事をした行為自体を忘れてしまうために生じます。否定的な言葉は避けて、肯定的な言葉を使うようにしましょう。
✖ :食べたでしょう(気持ちを抑えるから)
○ :これから食べましょうね、ご飯をたべましょうね。
⦿ 当時の記憶の世界に意識が戻る。
夕方ごろ自宅にいるにも関わらず、「自分の家に帰る」と言い出した。
なるべく話に合わせた対応をとるといいでしょう。
外が明るければ、一緒に帰りましょうと軽く散歩をする。
外が暗ければ、今晩は泊まって明日お帰り下さいと言う。
3.認知症の症状の現れ方
- 他人には行儀よく、近親者に怒りっぽい
- 自分を守る気持ちが強くなる
- 感情的なしこりが強く残る
認知症の症状の出方には特徴があります。感情を表に出して接してしまうと認知症のお年寄りにはネガティブな印象が残ります。親切だなと思われるような対応をすることでポジティブな感情を抱きます。
家族として認識している証拠だと思い、自分の置かれている状況がある程度判断できるのだとポジティブにとらえることがよい。
尿失禁してしまった場合、「ほかの人がやった」や「水をこぼした」などいいわけをすることがあります。自分を守る本能で不利なことは認めたくないためにおこります。こんなときも、肯定的に「誰かがやったんですね」と否定しないことが大切です。
一度片づけた洗濯物を再度たたみ始めたとき「なにやってるのよ!」と怒ってしまうと嫌な気持ちだけが強く残ります。こんなときも、感謝の気持ちをのべ、「いつもたたんでくれてありがとう」と肯定的に言ってあげることが大切です。
4.記事の指導せん
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5.まとめ
認知症患者への対応で大切なことは我々の世界を押し付けるのでなく、認知症のお年寄りがつくっている世界を理解し大切にするという気持ちを持って対応することです。
介護でお悩みの方へ、認知症のお薬をもらいに来るご家族の方へお渡ししたい指導せんです。