デエビゴとベルソムラの作用機序・違い・服薬指導のポイント

本記事は薬剤師が添付文書・各種論文等を参考にして執筆しています。
一部、私的見解がありますので、最終判断はご自身で考えてください。

1.ベルソムラとデエビゴの違い

2020年7月6日(月)にデエビゴは発売します。
同効薬であるベルソムラとの違いについて現役薬剤師が考察します。

服薬指導や処方鑑査のポイントもまとめたのでご活用ください。
両薬剤の直接の比較試験はないので、私見が混ざった部分もあります。

1-1.作用機序について

どちらも覚醒に関与するオレキシン受容体(OX)に拮抗する薬です。
オレキシンには1受容体と2受容体があり、選択性の違いがあります。

デエビゴの方がノンレム睡眠に関与する2受容体の選択性が高いです。
ベルソムラはいずれの受容体にも同程度の選択性があります。

OX1/2受容体のCa流入Ki値の違い

デエビゴ錠:
OX1:8.1nmol/L・OX2:0.48nmol/L
ベルソムラ錠:
OX1:0.55nmol/L・OX2:0.35nmol/L

参照:【薬効薬理】作用機序:添付文書


1-2.服用上の注意点について

どちらも食後投与で睡眠の導入効果が落ちます。
できれば食後2時間程度あける必要があります。

夜勤が多い会社員は、食べてすぐに寝る場合もあり、
夕食の時間から寝るまでの時間の聞き取りが必要です。

絶食と比較した摂食下での影響

デエビゴ錠:
Cmax:23%↓・AUC:18%↑・Tmax:2時間遅延
ベルソムラ錠:
Cmax:9%↑・AUC:ー・Tmax:1.5時間遅延

参照:【薬物動態】食事の影響(外国人データ):添付文書


1-3.効果の違い・比較ついて

ベルソムラは他の睡眠薬との比較検討試験がありません。
個人的には効果は弱く、他の睡眠薬との併用が多い印象です。
ベンゾジアゼピン系の代替薬としては難しいと感じます。

デエビゴはゾルピデムとの比較試験があります。
睡眠導入・中途覚醒はゾルピデムよりも有意に効果があり
ベンゾジアゼピン系の代替薬としても使えるように感じます。

比較検討試験の有無

デエビゴ錠:
ゾルピデムより有意に効果がある。
ベルソムラ錠:
他の睡眠薬との比較検討試験はない。

参照:【治療に関する項目】臨床試験:インタビューフォーム


1-4.副作用について

どちらも習慣性や反跳性不眠・連用による効果減弱はありません。
オレキシン特有の倦怠感・悪夢といった副作用に注意してください。

オレキシン受容体は摂食行動にも関与しており、
デエビゴでは体重増加・食欲亢進の副作用も報告されています。

頻度1%以上の主な副作用

デエビゴ:
傾眠・頭痛・浮動性めまい・睡眠時麻痺
悪夢悪心倦怠感体重増加
ベルソムラ:
疲労・傾眠・頭痛・浮動性めまい・
睡眠時麻痺・悪夢・入眠時幻覚

副作用:添付文書


1-5.併用禁忌・注意薬について

デエビゴは併用禁忌の薬がありません。
CYP3Aを阻害する薬に2.5mgへの用量規定があります。

ベルソムラはCYP3A4を強く阻害する薬と併用禁忌です。
CYP3Aを阻害する薬に10mgへの用量規定があります。

どちらもCYP3Aを強く誘導する薬で効果が減弱します。
どちらも他の睡眠薬との併用は問題ないかと思います。

併用禁忌薬・疾患の有無

デエビゴ錠:
同成分に対して過敏症の既往歴のある患者
重度の肝機能障害のある患者
ベルソムラ錠:
同成分に対して過敏症の既往歴のある患者
併用禁忌薬:イトラコナゾール・クラリスロマイシン
リトナビル・ネルフィナビル・ボリコナゾール

参照:【相互作用】併用禁忌:添付文書


1-6.調剤上の注意点

デエビゴは安定性の試験をしており一包化できます。粉砕も可能です。

ベルソムラは一包化できません。光・湿度の影響により粉砕も不可です。

一包化・粉砕の可否

デエビゴ錠:
一包化 ◯・粉砕 ◯
ベルソムラ錠:
一包化 X・粉砕 X

参照:各製薬会社HP


2.処方鑑査時の疑義照会チェック

薬剤師なら疑義照会すべきかどうか悩むことは多いと思います。
現役薬剤師としてポイントをまとめたので確認してください。

2-1.必ず疑義照会をすべき場合

併用禁忌に該当するときは、疑義が終わるまで調剤できません。
特に、ベルソムラとクラリスロマイシンの禁忌該当は注意します。

ベルソムラとデエビゴが併用されたときも同様です。
他の睡眠薬との併用は問題ないと考えます。

限度量を超えているときも同様です。
ベルソムラで20mg、デエビゴで10mgが限度になります

2-2.なるべく疑義照会すべき場合

どちらも用量規定にかかる場合・CYP3A誘導薬を併用中の場合は、
なるべく疑義照会をして、そのままの処方でいいか確認するべきです。

効果が強くでれば、ふらつき等の副作用から転倒する恐れがあります。
効果が弱くなれば、寝付きの悪さからQOL低下の恐れがあります。

CYP3A阻害薬の併用有無

(太字はベルソムラの禁忌薬)
フルコナゾール・エリスロマイシン・ベラパミル
イトラコナゾールクラリスロマイシンリトナビル
ネルフィナビルボリコナゾール・ジルチアゼム

CYP3A誘導薬の併用有無

リファンピシン・フェノバルビタール・フェニトイン・カルバマゼピン
・デキサメタゾン・セントジョーンズワート

3.服薬指導のポイント

オレキシン特有の服用における注意点があります。
特に夕食時間や併用薬はよく確認してください。

ベンゾビアゼピン系からの切り替えの場合、医師は習慣性の少なさなどを説明して、
処方しているケースが多いので、薬剤師も同調して安全性をPRするといいと思います。

服薬指導で確認すること

・夕食後から寝る前までの間隔の聞き取り
・併用(禁忌・注意該当)薬の聞き取り
・就寝直前の服用の説明・確認
・副作用(疲弊感・倦怠感など)の説明・確認

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ABOUTこの記事をかいた人

薬わかるー指導せんー:管理人
調剤薬局勤務:研修認定薬剤師

京都薬科大学卒。大手調剤DSチェーンにて管理薬剤師を経験後、調剤薬局に転職。2015年10月より薬わかるー指導せんーを設立、薬の基本が一目で分かる最高の指導せんをあなたにお届けしたい!