「処方鑑査で気をつけるべきことは?」
糖尿病の処方せんってどこを意識的に見たらいいんだろう。何となく分かっているつもりでは優秀なかかりつけ薬剤師にはなれません。
「見逃してはいけない重点ポイントって何」
「疑義照会すべき基準が分からない」
新人薬剤師は絶対に押さえて欲しい、ベテラン薬剤師にもおさらいして欲しい糖尿病治療薬のハイリスク処方せんで実務的な鑑査すべきポイントをまとめました。
1.糖尿病処方せん鑑査のポイント
処方せんを鑑査するときに気になるのは疑義照会すべきかどうかだと思います。私個人の経験からいくつかのポイントをまとめました。
1-1.同効薬重複は疑義照会
原則、同じ作用機序をもつ薬は併用しません。
薬効重複がある場合は、必ず疑義照会をしてください。
最近、増えている配合錠は医師も間違えることがあるので注意が必要です。
SU薬と速攻型インスリン分泌薬は作用機序が似ているため、DPP4阻害薬とGLP-1作動薬は作用機序が一部かぶっているため、それぞれ併用不可です。
返戻もしくは減点などのレセプト査定対象になります。
- スルホニル尿素薬(SU)
(薬剤例:アマリールなど) - 速効性インスリン分泌薬(グリニド)
(薬剤例:シュアポストなど) - ビグアナイド薬
(薬剤例:メトグルコ) - チアゾリジン薬
(薬剤例:アクトス) - αグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
(薬剤例:セイブルなど) - DPP4阻害薬
(薬剤例:ジャヌビアなど) - SGLT2阻害薬
(薬剤例:ジャディアンスなど)
- グリニド × α-GI
グルベス配合錠:グルファスト × ベイスン - チアゾリジン × ピグアナイド
メタクト配合錠:メトグルコ × アクトス - チアゾリジン × SU
ソニアス配合錠:アクトス × アマリール - DPP4 × ピグアナイド
エクメット配合錠:エクア × メトグルコ
メトアナ配合錠:スイニー × メトグルコ
イニシンク配合錠:ネシーナ × メトグルコ - DPP4 × チアゾリジン
リオベル配合錠:ネシーナ × アクトス - SGLT2 × DPP4
スージャヌ配合錠:スーグラ × ジャヌビア
トラディアンス配合錠:トラゼンタ × ジャディアンス
カナリア配合錠:カナグル × テネリア
ケース1)SU+グリニド
朝食後
グルベス配合錠 1錠
夕食直前
作用機序が似ているため疑義照会が必要です。
返戻・減点などのレセプト査定対象になる恐れがあるため、どちらか一方で処方してもらいます。
ケース2)GLP-1+DPP4
週1皮下注
エクメット配合錠HD 2錠
朝夕食後
作用機序がかぶっているため疑義照会が必要です。
返戻・減点などのレセプト査定対象になる恐れがあるためエクメットをメトホルミン単剤に変えてもらいます。
ケース3)エクメット+メトホルミン
朝夕食後
メトホルミン錠250mg 2錠
朝夕食後
薬効重複していますが、疑義照会は不要です。メトホルミンの用量が適正であれば問題なく、用量調節のため処方されることがあります。
1-2.用量超過は疑義照会
原則、添付文書の用量を超えて処方することはありません。用量超過がある場合は、必ず疑義照会をしてください。
添付文書とは別に糖尿病学会よりSGLT2もしくはDPP4とSUを併用した場合のリコメンデーションが推奨されています。こちらの用量を超過した場合も疑義照会をしましょう。
・グリメピリド:2mg/日まで
・グリベンクラミド:1.25mg/日まで
・グリクラジド:40mg/日まで
ケース1)SGLT2+SU
朝食後
アマリール錠3mg 1錠
朝食後
推奨用量オーバーのため疑義照会が必要です。
アマリール錠を2mgへ減量が推奨されますが、そのまま投与するケースもあるかと思います。
ケース2)配合錠の初回投与
朝食後
初回治療の場合、疑義照会が必要です。
配合錠はどちらか一方の服用歴がないと処方できないため、単剤に変更してもらいます。他医療機関で服用歴がある場合はOKだと思います。
ケース3)メトホルミンの過量投与
朝夕食後
75歳以上の場合、疑義照会が必要です。
75歳以上の高齢者にはメトホルミンとして1500mgまでが推奨されていますが、そのまま投与するケースもあるかと思います。
1-3.用法相違は医師にクセあり
適正な用量の場合、用法が違っても良しとする場合は多いと思いますが、単純な処方ミスの可能性もあります。なるべく疑義照会をして、プレアボイド事例をノートなどにまとめておくといいでしょう。
ケース1)グリニド・α-GIの食後投与
毎食後
初回投与の場合、疑義照会が必要です。
ヒートに食直前と書いてあることが多いため食後で指導すると、患者にとっても違和感があります。
ケース2)SGLT2の夕食後投与
夕食後
初回投与の場合、疑義照会が必要です。
夜に服用すると夜間頻尿の原因になるおそれがあるため、朝食後に変更してもらいます。
ケース3)一部DPP4の分2投与
朝夕食後
初回投与の場合、疑義照会が必要です。
本来分1処方の薬が分2として処方された場合は医師の処方ミスの可能性があります。本来の服用方法に変更もしくは、分2のDPP4に変更してもらいます。
2.まとめ
添付文書の用法・用量相違だけではない疑義照会するべき事例はたくさんあります。ぜひ参考にしてください!