ピロリ菌の除菌治療は注意点が多い!実は飲み忘れがあると除菌できないことがあります。薬剤師からあれもこれもと話を聞いて頭が混乱していませんか?今回は、除菌治療についてくわしくご紹介します。
1.ピロリ菌とは?
高齢者の7割が感染している!自らアンモニアを作り、アルカリ性のバリアを作ることで胃酸の中で生き続けることができます。ピロリ菌は感染すると胃粘膜が萎縮していき、胃潰瘍や胃がんのリスクファクターとなる恐ろしい細菌です。
1-1.感染経路
完全には解明されていませんが、小児期における口からの感染が有力とされています。上下水道が普及してなかった昔に比べ感染者は減っていますが、保育園や家庭内での飲食物や食器を介して感染することもあります。
1-2.胃がんとの関係性
ピロリ菌に感染すると胃がんになるリスクが大きく上がります。胃潰瘍などの患者さんを対象にした調査にて10年間で胃がんが発生した人の割合が非感染者0%に対し感染者は2.9%でした。早期胃がん治療後の感染者に対し除菌を行うことで再発リスクが1/3に減ったと報告もあります。
2.検査方法は?
内視鏡(胃カメラ)で異常がないか確認するついでに、胃の組織をとってピロリ菌の存在を確かめます。その他にも、採血・尿検査・呼気検査・検便といった体の負担が少ない方法もあるので胃カメラが苦手な人も安心です。通常1つの方法で行いますが、偽陰性となることがあるため、複数の検査を合わせたほうがより正確な検査ができます。
2-1.除菌方法
1次除菌 | 代表薬剤例 |
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クラリスロマイシン | クラリシッド |
アモキシシリン | サワシリン |
PPI | タケキャブ |
実は約15%の患者さんは除菌に失敗する。服用後4週間で除菌ができているか判定します。飲み忘れたときの対応方法など注意点を理解しておくことが成功するポイントです。
2次除菌 | 代表薬剤例 |
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メトロニダゾール | フラジール |
アモキシシリン | サワシリン |
PPI | タケキャブ |
1次除菌で失敗した患者さんは抗生物質を変えて2次除菌をします、これでも5%の患者さんが除菌に失敗する。
メトロニダゾールはアルコールの代謝酵素を阻害するため悪酔いしやすくなります。除菌中は7日間だけ禁酒する必要があります。
※保険適応外
3次除菌 | 代表薬剤例 |
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シタフロキサシン | グレースビット |
アモキシシリン | サワシリン |
PPI | タケキャブ |
1次2次除菌が不成功だった場合、治療は自費になる。希望により3次除菌を行います。ただし、上部消化菅内視鏡検査を行いピロリ菌に対し薬剤感受性試験をする必要があります。除菌の判定は約3カ月後に尿素呼気試験で判定します。
2-2.除菌治療後の問題
除菌終了後、胃酸の分泌が正常に戻るため逆流性食道炎を起こす患者さんがいます。胸やけがひどいようであれば再受診をしましょう。ただし、PPIが処方されたときは注意が必要です!1ヵ月後の除菌判定が偽陰性になる可能性があります。除菌終了後、胃薬を処方してもらうときは必ずピロリ菌除菌中であることを伝えましょう。
2-3.再感染リスク
除菌が成功しても3%の方が再感染することがあります。成人で再感染することはまれですが、上下水道の整っていない発展途上国などに旅行するときは飲料水に注意しましょう。
3.除菌治療の注意点
ピロリ菌の除菌療法は100%成功するものではありません。薬を正しく服用することが成功のポイントです。
- 薬は決められとおり飲みきること
- アレルギー・併用薬に注意!
- 服用後4週間で除菌の判定
- 副作用がでたらまず相談
- 二次除菌療法の間はアルコールを避ける
薬の飲み忘れは除菌率の低下だけでなく、耐性菌の原因となります。飲み忘れたときは気づいたときに服用して、1度に2回分を飲まないようにすること。飲み忘れたときの対応方法で困ったら薬剤師に確認しましょう。
抗生物質のアレルギー歴は要注意!必ず薬剤師に確認してもらいましょう。また、睡眠薬のベルソムラを飲んでいる方は危険信号!ピロリ菌除菌で使われる抗生物質クラリスロマイシンと同時服用することができません。他にも飲み合わせの悪い薬があるので必ず薬剤師に併用薬を伝えましょう。
次回受診日を医師に確認してください。除菌終了後、PPIと呼ばれる胃薬を服用すると判定が偽陰性になる可能性があるため注意が必要です。
⦿一時的なので薬を飲み続けてもよい副作用
下痢・軟便、味覚障害、だるけ
⦿薬剤師または主治医に連絡する副作用
発熱、潜血した便、発疹やかゆみ
二次除菌で使用するメトロニダゾールはアルコールの代謝を阻害するので悪酔いしやすくなります。悪心・嘔吐・頭痛などの症状を起こしやすくなるため7日間だけ禁酒します。
4.記事の指導せん
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5.まとめ
飲み忘れがあると除菌率は大きく低下します。軽い下痢が起こってやめてしまう患者さんもいます。ピロリ菌の除菌療法をうけるときは、この指導せんを参考にしてください!
注意点の多いピロリ菌除菌に指導せんは必需品です。除菌治療をするすべての患者さんにお渡ししたい指導せんです。