クレストールで筋肉が溶ける!?週刊現代やネットの情報でびっくりされた患者さんも多いと思います。表現は過激ですが、これは間違いではありません。筋肉が溶ける副作用は横紋筋融解症という名前です。血液検査で発見することができるので、高脂血症の治療をしている患者さんは定期的に血液検査をすることをおすすめします。
1.横紋筋融解症の基本
横紋筋融解症は高脂血症の治療に使われるHMG-CoA酵素阻害薬やニューキノロン系抗生物質で起こる可能性がある副作用の一つです。これらの薬以外でも起こる可能性がありますが、極めて稀なため薬剤師から説明することはほとんどありません。横紋筋融解症の発生件数はHMG-CoA酵素阻害薬で一番多いので、高脂血症の治療を初めてする患者さんは注意しておきましょう。
1-1.スタチン系薬剤の一覧
商品名 | 成分名 |
---|---|
クレストール | ロスバスタチン |
リピトール | アトルバスタチン |
メバロチン | プラバスタチン |
ローコール | フルバスタチン |
リポバス | シンバスタチン |
リバロ | ピタバスタチン |
成分名の語尾がすべてスタチンで終わることからHMG-CoA酵素阻害薬はスタチン系と呼ばれることが多いです。
※高血圧の治療に使われるカデュエット・アマルエットにもスタチン系が含まれています。
1-2.発生頻度
スタチン系の場合、約1000人に1人の確率で起こることが報告されています。不幸にも横紋筋融解症が原因で死亡する患者さんは1000万人に1人の確率でみられます。これはジャンボ宝くじの1等に当たるのと同じ確率だそうです。
1-3.発生時期
スタチン系の場合、飲み始めてから数週間~数ヵ月以降に発症することが多い。飲み始めてから数年経過している場合でも、併用薬との相互作用で血中濃度が上がり発症することもあります。脱水症状が横紋筋融解症を発症する引き金になることもあるので、水分は意識的にとりましょう。
2.早期発見が重要!
不幸にも横紋筋融解症を発症したときは、直ちに薬の中止もしくは減量をする必要がある。発見が早期であれば、薬の中止で自然と回復することがほとんどです。副作用を放置すれば、溶けた筋細胞が腎障害をひきおこし腎不全・透析となる可能性もごく稀にあります。そうならないために「初期症状の把握」と「定期的な血液検査」が重要となってきます。
2-1.副作用の初期症状
- 筋肉が痛い
- 手足の力が入らない
- 尿が赤褐色になる
横紋筋融解症の初期症状は筋肉の痛みから始まります。特に筋肉繊維の多い大腿部で起こりやすいため、足の痛みは要注意です!運動をしていないのに、筋肉が痛む・足がつるといった症状がでたときは横紋筋融解症の可能性があります。
手足に力が入らない・しびれる・こわばる・全身がだるいといった症状がある場合は要注意です!特に薬の飲み始めにこれらの症状があるときは横紋筋融解症の可能性があります。
溶けた筋細胞は腎臓をとおり尿中に排泄されます。尿の色が赤褐色となり「コーラ」のようなおしっこがでてきます。腎障害が進んでいる可能性があるので早期に医療機関を受診することをおすすめします。
2-2.血液検査で発見
横紋筋融解症を発症したときは、血中CK値が上昇しやすい。CK値は運動、インフルエンザなどの感染症、脱水などで通常の5倍程度まで上昇することがあります。過去の血液検査結果を見て、数値が高いことを理由に自己判断で服用を中止してはいけない。
3.記事の指導せん
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4.まとめ
まれな副作用については薬剤師も説明しないことがあります。これをいい機会に「副作用の初期症状」くらいは頭の片隅にいれておきましょう!
高脂血症の治療を開始する患者さん、副作用を不安に思っている患者さんにお渡ししたい指導せんです。