こちらの記事は薬剤師および医療関係者向けに書かれた記事です。
平成28年度調剤報酬改定で重複投薬・相互作用等防止加算は点数が20点から30点に上がりました。
残薬を見つける服薬指導のポイントをご紹介します。あなたはどのように残薬確認をしていますか?ピンポイント・不揃いの整理が残薬発見のコツです。HAMAYOがあなたに最高の話法を伝授します。
1.残薬問題
年間475億円ともいわれる残薬問題を解決できるのは薬剤師しかいない!残薬調整には患者だけでなく薬剤師の積極的なアプローチがとても重要です。
1-1.仮面をかぶる患者
明らかに残薬があると思われるのに「ない!」と言い張る患者がいます。私はこのように残薬があるのにないという患者を仮面ノンコンプライアンスと呼んでいます。
仮面をかぶってしまう理由はいろいろあると思いますが、いかにこの仮面を見破るかがキーポイントになります。
1-2.残薬がないと不安な患者
1ヶ月以上の残薬がないと不安に思う患者・震災のときにお薬がなかったらどうするんですか?と言う患者もいます。これは残薬の定義がないために起こる問題です。
7日程度の残薬は持っておく必要があります。しかし、14日を超える残薬は調整しなければいけない!処方が変われば残薬はゴミになってしまう。これは完全に医療費のムダです。
2.残薬になりやすい薬
どのような種類のお薬で残薬になりやすいのか知る必要がある。薬効や用法から患者さんの服薬状況を想像して考えてみましょう。
- 自己調節する薬
- 食前・食間の薬
- 1日3回飲む薬
疾患のメインとなる薬は飲まなければ日常生活に支障がでるので、患者さんも忘れなく飲むように心がけます。一方で、疾患のサブとなる薬は自己調節している場合が多く、残薬がでやすい傾向にあります。
これらの自己調節する薬は必ず残薬が発生します。毎回メインの薬と同じ日数が出ている場合は、特に注意が必要です。
薬効群 | 代表薬剤例 |
---|---|
便秘薬 | マグミット |
鎮痛薬 | ロキソニン |
胃腸薬 | ムコスタ |
抗不安薬 | デパス |
食後の薬に比べて食前、食間に飲む薬は残薬がでやすい傾向にあります。この薬で残薬が多くでている場合は、飲み忘れ時の対処方法を服薬指導することで改善することがある。
薬効群 | 代表薬剤例 |
---|---|
漢方 | 抑肝散 |
制吐薬 | ナウゼリン |
食後血糖改善薬 | ベイスン |
昼の薬は、外出時、勤務時などで飲めない環境になってしまうことが多いため残薬がでやすい傾向にあります。
薬効群 | 代表薬剤例 |
---|---|
ビタミン | メチコバール |
去痰薬 | ムコダイン |
4.服薬指導のポイント
自己調節、食前・食間、1日3回服用、これらの条件を2つ以上満たす薬は高確率で残薬が発生しています。
- マグミット:自己調節&1日3回
- 漢方:食前&1日3回
- ベイスン:食前&1日3回
4-1.ピンポイント確認
患者さんは薬がなくなったから病院に行っています。ただ漠然と「余っているお薬はありませんか?」と聞いても、余りなどないと言うことが多い。
メインの薬は余ってないと誤解して捉えている可能性もあります。残薬になっていそうな薬を絞ってピンポイントで聞くことが残薬を発見するポイントです。
- 狙いを絞って確認!
- 掘り下げる
「余っているかも・・・」ここで少し苦い顔をする方は余っている可能性が高いです。
マグミット以外で日数を調整して欲しいお薬はありませんか?
薬が余っている場合は、ここからさらに深掘りする。残薬の全容を把握できたら疑義紹介します。
4-2.日数ふぞろい確認
薬を飲む種類が多い患者では日数が薬ごとにチグハグになっていることがあります。人はふぞろいが嫌いです!整理されている方が気分もいいでしょう。
残薬という言葉を出さずに「ふぞろいの整理」と言うことで、残薬調整が患者に受け入れやすくなります。
- ふぞろいの整理
- 残薬バックのお渡し
手持ちのお薬の日数がチグハグにずれていませんか?日数のズレは薬局で調節することができますよ。
「ズレているかも・・・」このように思う患者さんは多いです。日数のズレが大きいようであれば疑義照会しましょう。
手持ちの数が分からなければ、次回来局時にコチラの袋に入れてお持ちください。
日数のズレは家に帰らないと分からないコトがあります。ビニール袋にお薬を入れて持ってきてもらいましょう。次回来局時に疑義照会して残薬調整します。
残薬調整したときは
重複・相互作用防止加算を算定する!
4-3.言いやすい環境づくり
薬局で日数を調整することができます。余っているお薬があれば気軽に持ってきてくださいね
残薬のことを医師に言えない患者さんもいます。せめて薬局では残薬を言いやすい環境を構築していきましょう。残薬がでることは恥ずかしいことではなく、気軽に言ってくださいと言うことも大切なことです。
5.疑義照会に時間がかかる
FAXによる疑義照会のため返事が返ってくるまで小一時間もかかる。電話しても返答が返ってくるまで患者を待たすのがイヤだ。
こんな悩みのため残薬の疑義照会をためらっていませんか?そんなお悩みを解決する方法をご紹介します。
5-1.さき出し・あと報告
疑義照会の返答前に残薬調整してお渡しするケースがありますが、これは法的にNGです。患者・病院とのトラブルに発展することがあります。
「残薬調整の疑義照会は不要でお薬をお渡し、事後報告だけで良い」このような取り決めを病院と交わす交渉をしてみましょう。
5-2.服薬情報等提供料の算定
患者の時間がない・一包化や多剤服用で調節に時間がかかる場合は、残薬状況を把握して病院にFAXで報告します。口頭でいいので、報告していいか患者に同意をとる必要があります。
重複・相互作用防止加算の算定ができないかわりに、服薬情報等提供料が算定できます。
医師に報告したときは
服薬情報等提供料を算定する!
6.原因を追究する
毎回、残薬が発生していてコンプライアンスが悪いと思われる患者さんがいます。なぜ飲み忘れがあるのか原因を探ってみましょう。飲み忘れ時の対応方法を服薬指導することで意外と簡単に解決することもあります。
それでも解決しない場合は、医師に状況を報告して一包化や処方変更など依頼するべきです。どうすれば残薬がでない状況になるか提案することこそ薬剤師の本来の姿です。
- 一包化の提案
- 剤形・規格変更の提案
- 用法まとめの提案
- 類似薬剤変更の提案
7.まとめ
残薬調整は薬剤師の重要な役割です。加算を算定できるだけでなく、医療費の削減に貢献できます!
今回の服薬指導のポイントをぜひ活用してください。今まで見えてなかった真実が見えてきます。
皆さま1日3回飲む薬は余りやすいです。○○様はこのマグミットは余っていませんか?