アトピー治療にステロイドは欠かせません。ステロイドの塗り方にはリアクティブ療法とプロアクティブ療法が あるのをご存知ですか?軟膏1つだけの処方せんでも奥が深い使い方があります。今回は意外と知られていない 最近のステロイド治療についてご紹介します。
1.従来のステロイド治療法
「ステロイドは症状が治まればやめる」これが今までの一般常識でした。今もこれは間違っていませんが、再燃を 繰り返すアトピー患者では、皮膚の状態起伏が激しいという難点があります。
症状がおさまればステロイドをやめて、悪化したら再度ステロイドを開始する。この繰り返しがリアクティブ療法です。これでは状態悪化時にデートの約束があったら最悪です。患者のQOLを考えたら皮膚が正常のままのほうがいいですよね!
1-1.リアクティブ療法の特徴
- メリット
- デメリット
状態が悪くなればステロイドを使うため塗る場所が明確です。ステロイドをだらだらと使わなくていいので、経済的負担が軽い。リアクティブ療法は年に1-2回症状が悪化する患者さん向けの治療法といえます。
状態悪化時は精神的につらい。治療が遅れると皮膚状態がおちつくまでに時間がかかる。
2.プロアクティブ療法とは?
患者の皮膚を正常のままに保ち、状態が正常のときもステロイドを使用するのがプロアクティブ療法です。
プロアクティブ療法では、症状が治まっている間もステロイドを使用します。いつも症状が出る部位が決まっていれば、その 部位に週1~2回のペースでステロイドを塗布します。状態が悪化してきたときは毎日塗布して、状態が治まるまで様子をみます。
2-1.プロアクティブ療法の特徴
- メリット
- デメリット
皮膚の正常な状態が長く続くため精神的に楽。頻繁に再燃を繰り返す患者さん向けの治療法といえます。
塗る頻度が多いのでコンプライアンス不良になりやすい。状態悪化時の対処方法など初回の指導に時間がかかる。 ステロイドをやめるタイミングが難しくなる。
3.細胞レベルの炎症は見えない
リアクティブ療法でステロイドを使用したときに「目に見える炎症」が治まっても、実は細胞レベルでは炎症が残っています。通常はヒルドイドソフト軟膏などの保湿剤でケアを続けることで再燃することはありませんが、アトピー患者では保湿剤だけでは 間に合わず再燃することがよくあります。プロアクティブ療法では細胞レベルの炎症を抑え続けるためにランクの低いステロイドを 長期的に使用します。週2回程度の塗布ではステロイドの副作用はほとんどないと言われています。
4.プロアクテイブ療法の注意点
- 定期的にステロイドを続ける
- 量は通常の1/2~1/3で
- 保湿剤・タクロリムスも併用する
- 悪化時は毎日塗る
- 生活習慣の改善も忘れなく
状態が良くなっても塗る頻度を減らしながら治療を続ける。今まで症状のあったすべての部位に塗るのが原則です。 隔日、週2回、週1回と段階的に塗る頻度を減らしていきます。
通常ステロイドは1FTUで手のひら2枚分くらいの量に相当しますが、プロアクティブ療法では目に見える炎症は 治まっているため通常の1/2~1/3の量で大丈夫です。擦り込まない程度になるべく薄く塗るように指導します。
ステロイドを塗らない日は保湿剤やタクロリムス軟膏を塗ると効果的です。タクロリムス軟膏はほてったり、ヒリヒリしたりすることがあるので注意が必要です。
状態が悪化したときは塗布量を増やして毎日外用します。赤みがでてきたら早めに塗る頻度を増やして対処することで 皮膚状態を良好のまま保つことができます。
快食・快便・快眠を心がけることで皮膚環境を整えることも大切です。脂っこい食事は控えて食物繊維が多い食べ物を とるようにします。毎日お風呂に入って皮膚環境を清潔に保つことでアトピーの再燃しにくい皮膚をつくることも大切です。
5.記事の指導せん
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6.まとめ
プロアクティブ療法を良好に保つには継続したケアが重要です。症状の再燃に悩まされている方は医師に相談してぜひトライしてください!
プロアクティブ療法があなたの未来を変える。ステロイド治療で再燃を繰り返す患者さんにお渡ししたい指導せんです!