うつ病患者は1ヵ月で50%、半年間で70%が自己判断で薬をやめているという報告がある。再発を繰り返して症状が重くなっていく患者さんを私は数多く見てきました。薬を飲み始めて数ヵ月で体調がよくなっても、決して自己判断で飲むことをやめないで欲しい。
1.薬をやめる原因
3つの視点で薬をやめる原因を考えてみました。医療スタッフ、患者、お薬それぞれにどのような問題があるのでしょうか?
1-1.医療側の問題
- 患者とのコミュニケーション不足
- 患者のニーズに合わない処方
- 抗うつ薬の用量不足
医師・薬剤師とのコミュニケーション不足から薬をやめてしまう患者は数多くいる。患者は、医師からうつと診断されて落ち込んでいます。さらに薬剤師から、吐き気が起こる、眠くなる、絶対にやめないで、と拍車をかけて話をされると頭の中はパニック状態になります。
- 胃腸障害について
- 体重増加について
×:吐き気がでることがあります。
○:少し胃が重く感じることがありますが、1週間程度で治まってきます。
×:体重が増えることがあります。
○:元気がでると食欲も増すので、食べ過ぎに注意してくださいね。
1-2.患者側の問題
- 薬嫌い・薬に対する偏見
- 症状の回復を治ったと勘違いする
- 経済的要因
- 社会支援ネットワークの地域格差
うつ病の正確な情報を知ることが大切です。インターネットや週刊誌には必ず否定的な意見があります。残念ながら「もう体調も良くなったのに何でまだ飲む必要があるの?薬漬けにされてる!?」と勘違いをしている患者さんが後を絶ちません。病気のことを一番理解しているのは、あなたがいつも診察を受けている医師です。薬のことを一番理解しているのは、あなたがいつもお薬をもらっている薬剤師です。ネット上の顔の見えない人の言うことを安易に信じるのは危険です。少なくとも、あなたのいつも会っている医師・薬剤師に相談してから判断をするべきでしょう。
うつ治療は医師との信頼関係がとても重要です。信頼できる医師だけでなく、信頼できるかかりつけ薬剤師をもつようにしましょう!
医師に専門性があるように、薬剤師にも得意とする分野があります。心療内科の近くの門前薬局で働く薬剤師をかかりつけ薬剤師にしたほうがよいと考えます。医師の処方内容を熟知しており、日常的に抗うつ薬を取り扱っているので、うつ病の知識レベルが豊富です。
1-3.抗うつ薬の問題
- 副作用
- 効果発現の遅さ
- 用量調節の複雑さ
効果が現れるまでに1~2ヵ月程度の期間を必要とします。飲み始めてから症状が改善するまでに時間がかかることを知っておきましょう。症状が良くなってからも最低4~9ヵ月は服用を続ける必要があります。自己判断で安易に薬をやめると再発する可能性が高いです。医師・薬剤師と十分にコミュニケーションをとりましょう。過敏に考えず、副作用の正しい知識を持つことも大切です。
- 急性期治療(2~3ヵ月)
- 持続期治療(3~6ヵ月)
- 回復期治療(3~6ヵ月)
薬を変更・増量しながら抑うつ気分を改善していきます。正しい副作用の知識を薬剤師に教えてもらい、焦らずじっくり治療に専念しましょう。
薬が効いて症状がなくなった時を寛解と言います。ここで薬をやめてしまうと症状が再燃する可能性が高いです。症状がなくなり気持ちが晴れてきても、無理をせずにしばらく服用を続ける必要があります。
薬の量を徐々に減らし、少量で薬を維持した後、服薬を中止します。薬の量を減らすことで再発しやすい時期です。早く薬をやめたい気持ちはわかりますが、医師・薬剤師としっかりコミュニケーションをとって再発を予防することが大切です。
2.記事の指導せん
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抗うつ薬治療の流れを知ってもらいたいときに使う指導せんです。患者さんが今どの治療期にいるのか把握することで薬剤師も服薬指導がしやすくなります
3.まとめ
うつ治療は信頼できる医師・薬剤師だけでなく、患者さん本人の意識も大切です。不安に思うこと・疑問に思うことは自分の中で抱え込まず、気軽に医師・薬剤師に相談しましょう!
うつ病の服薬指導には言葉を慎重に選ぶ必要があります。伝えることを吟味して、患者さんが不安に思わない言葉をよく考えましょう!